属人的な仕事のやり方が組織に根づくと、育成や引き継ぎが進まず、全体の成長が止まってしまいます。その課題を乗り越える鍵が、「ノウハウを見える化」し、共有の資産へと昇華する仕組み──A3フォーマットです。今回は、私が長年にわたって実践・改善してきたA3フォーマットを通じて、組織に“共創土壌”を育む方法をご紹介します。
共創というと特別なものに感じられがちですが、実は、日常の業務の中で「型」を共有することが最も確実な一歩です。特にリーダーが持つ経験や判断基準を「型」として部下と共有することで、信頼と成長の土壌が育っていきます。
「あの人にしかできない仕事」「あの人にしか分からない資料」──こうした属人化は、業務の停滞・育成の妨げ・後継者不在といった深刻な課題に直結します。
この状況を変えるために有効なのが、ノウハウや経験をフォーマット化し、組織の資産として共有することです。それが、A3フォーマットの大きな役割なのです。
1.ノウハウの共有による“型”の継承
リーダーやベテランの仕事設計や判断視点を、若手に伝える媒体になる。
2. 報告・指示の粒度を揃え、改善が進む
指示や報告が統一されることで、比較が容易になり、チーム内の切磋琢磨が促される。
3. “自ら考える”人財育成ツールになる
記入を通じて、部下が自然と「考えるべき観点」「先手を打つ視点」を身につけていく。
営業責任者時代には、営業の基本活動の流れをA3で可視化し、チーム全体で流れの微改善を繰り返し行うことで、新入社員でも成果を生み出すことのできる強い営業チームをつくることに成功しました。
また、CFO時代は、部門横断で報告内容をA3で統一し、経営陣が一目で状況や課題、進捗を把握できる状態を実現しました。
中でも注力したのは、表面的な報告では見えない潜在的なリスクやチャンス、その予防策・他社他部門からの学びや情報を、フォーマット上に明示的に組み込むことでした。これにより、A3フォーマットは“経営の武器”へと進化したのです。
1.リーダー自らがフォーマットを設計すること
どんな項目を見たいか、どこに注目してほしいかを明確にし、目的を持った構成を作る必要があります。
2. フォーマットを絶えず微改善し続けること
記入するほど“考える力”が身につき、「こういう視点を持つべきだったんだ」と、部下が記入しながら学べるように、項目そのものを微改善し続けることが大切です。これがリーダー自身の成長に繋がります。

A3フォーマットとは、単なる帳票ではありません。組織の経験と知恵を集約し、伝え、育てていくための共創のツールです。このツールを活かすことで、組織の土壌には“考える力”と“協働する姿勢”が育っていくのです。
次回はいよいよ共創土壌づくりの後編。私が人財や後継者育成に最もおすすめする、A3フォーマットを活用した「1on1ミーティング」の進め方についてご紹介いたします。