前回お伝えしたように、問題には必ず火元(根本的な原因、真因)があります。
仕事における問題とは、指示や施策、仕組み、教育水準などの結果として発生しているものです。真因を知るには、現象としての問題が「なぜ発生したのか」「なぜ続いているのか」と根本的な原因を掘り下げていくことが必要です。真因を究明せずに、対策を実行すると以前にお伝えしたように再発防止ができず「モグラたたき」的な効果しか得られません。
この真因を究明する基本的な方法が「なぜを五回繰り返す」手法です。現在できていない理由、再発している理由を「なぜ」「なぜ」と掘り下げていくのです。言葉で言うのは簡単ですが、実際に真因にたどりつくためには現場観察力と真因究明に関する経験が必要になります。
先達の指導を受けながら、多くの問題解決を経験してくると、なぜを五回繰り返すことによって、表面的には見えていない原因を把握して、再発を確実に防止できる根本的な対策を立案することができるようになります。
前回お伝えした酒販店へのオーナー開発営業においては、なぜ30代店主への提案がうまく実現しないのかを20代や40代の酒販店店主の事例と比較しながら、原因を深堀していきました。最初はまったく理由が不明でしたが、なぜ20代や40代では大きな障害がないのに、30代店主だと難航しているのかを多くの事例で検討していくうちに、20代店主への提案時は親御さん(先代の店主夫妻)の同席が基本、40代店主になると先代店主はほぼ引退している状態と、年代ごとに親御さんとの関係が異なっていることが分かりました。
さらに「なぜ」を繰り返す中で、30代店主の場合は、本人は自分が意思決定権者だと言っていますが、実際はまだご両親が実権を持っている場合がほとんどであったことにようやく私たちは気がつきました。ご両親が同席されていないところでいくら店主と話が弾んでも、ほとんど会話していないご両親からは私たちが信頼を得られていなかったために、ご家族全体でのそれ以上のオーナー検討の進展が得られなかったのです。
要はオーナー開発プロセスが店主向けになっていて、家族全体の信頼を得ることを目標にしたものになっていなかったことが、このときの私たちの真因でした。
この真因究明に基づいて、ご家族全体を巻き込むプロセス(私たちからの初回提案はいつでも家族全員が揃っていただくことを前提にする)に変更することで、私たちの活動は酒販店のご家族全体の信頼を得るものへと進化していき、新規オーナー開発は大きく躍進いたしました。
真因究明は問題解決マネジメントの核心的な活動です。次回は真因究明を行う上での大切なポイントを私の失敗事例を通じてお伝えしていきます。