(先考型プロセスマネジメント その2)
前回は、「結果管理」ではなく「先考管理」 が必要であることをお話ししました。
目標を達成するためには、結果が出てから反省するだけでは不十分です。ゴールから逆算し、先を読み、リスクを予測し、行動を改善し続けることが重要です。
今回からは、先考型プロセスマネジメントの具体的な進め方に入っていきます。
その第一歩が、基本計画の策定です。
基本計画とは、いわば 山頂までの登り方 です。
どの山を目指すのか。どの登山道を選ぶのか。どのような装備や仲間が必要なのか。どこに危険があるのか。
これらをあらかじめ考えることが、目標達成の確率を大きく高めます。
目標とは、登山でいえば 山頂 です。
しかし、山頂を決めただけでは登ることはできません。
同じ山頂を目指す場合でも、登り方はいくつもあります。
経験者向きの道もあれば、初心者を含むチームに適した道もあります。
季節、天候、体力、装備、同行者によって、最適な登り方は変わります。
仕事も同じです。
売上目標を達成する、新規事業を立ち上げる、組織改革を進める、人材育成を実現する。
こうした目標にも、必ず複数の登り方があります。
だからこそ、目標を決めた後にすぐ走り出すのではなく、どの登り方が最も現実的で効果的なのかを考える必要があります。
この 「山頂までの登り方」を描くこと が、基本計画の役割です。
基本計画をつくるうえで、まず大切なのは、ゴールのイメージをできるだけ鮮明にすることです。
「売上を伸ばす」「顧客満足を高める」だけでは、ゴールとして曖昧です。
本来は、
どのお客様に、どのような価値を提供し、どのような状態を実現したいのか
まで考える必要があります。
私はよく「重要顧客のキーマンに、『さすが〇〇社だね。次回も貴社に頼みますよ』と
引き渡し時に言わせたい、この状態をみんなで狙っていこう」と部下たちに語っていました。
ゴールのイメージが曖昧なままでは、計画も曖昧になります。
逆に、ゴールのイメージが鮮明になれば、必要な行動や打ち手も見えやすくなります。
そのためには、仮説を最大限に膨らませることが重要です。
この目標を実現するためには、どのような成功パターンがあり得るのか。
どの顧客層を狙うべきか、どの順番で進めると効果が出やすいか、どこで大きなブレークスルーが必要になるか。
最初から正解を一つに決める必要はありません。
むしろ、複数の登り方を構想し、その中から最もよい筋道を選ぶことが大切です。
基本計画とは、単なる予定表ではありません。
目標達成に向けた「戦略のあらすじ」を描く作業なのです。
基本計画づくりの基本姿勢は、ゴールからの逆算です。
通常の計画は、現状からの積み上げで考えられることが多いものです。
「今の延長線上でどこまで伸ばせるか」、「これまでのやり方を少し改善すると、どの程度まで行けるか」
もちろん、現状を踏まえることは重要です。
しかし、現状からの積み上げだけでは、大きな目標や新しい挑戦には届きにくいことがあります。
先考管理では、まず 「あるべき姿」や「到達したいゴール」 から考えます。
そのうえで、現在とのギャップを見つめ、そこを埋めるための道筋を描きます。
たとえば、
1年後に顧客からどのように評価されたいのか。3年後にどのような事業構造を実現したいのか。
このように未来の姿から逆算すると、現在やるべきことの意味が変わります。
単なる改善ではなく、目指す姿に近づくための意図ある行動になります。
ただし、逆算だけで計画をつくればよいわけではありません。
逆算で大きな筋道を描き、現状からの積み上げで実現可能性を確認し、また逆算に戻って練り直す。
この往復によって、基本計画は少しずつ現実味と迫力を持っていきます。

基本計画では、必要なリソースを明確にすることも不可欠です。
人、モノ、カネ、情報、時間、技術。
これらが不足したままでは、どれほど立派な計画を立てても実行できません。
特に大切なのは、「今あるリソース」だけで計画を考えないことです。
大きな目標を達成するためには、現在不足しているリソースをどう確保するかまで考える必要があります。
どの部門の協力が必要か、外部パートナーやサプライヤーの力を借りるべきか、どの情報や技術を新たに手に入れる必要があるか。
リソースがあらかじめ完全に揃っている企業など、ほとんどありません。
だからこそ、不足しているリソースを明確にし、それを確保する計画を基本計画に織り込むことが重要です。
目標達成とは、今ある力だけで頑張ることではありません。
目標に必要な力を見極め、集め、組み合わせていくことでもあるのです。
基本計画において、もう一つ欠かせないのが リスク予測 です。
計画を立てるとき、人はどうしても順調に進む前提で考えがちです。
しかし、現実の仕事では必ず想定外が起こります。
顧客の反応が鈍い、競合が先に動く、キーパーソンが異動する、社内調整に時間がかかるなど。
こうしたリスクを事前に予測しておかなければ、問題が起きたときに後手に回ります。
トヨタには、「事前の一策、事後の百策」 という考え方があります。
事後に百の対策を打つよりも、事前に一つの予防策を打っておく方が、はるかに効果的だという意味です。
先考管理では、リスクを隠したり、軽視したりしません。
むしろ、計画段階で表に出します。
どこでつまずく可能性があるか、どのボトルネックが全体を止めるか、そのリスクに対して、事前に何を準備しておくべきか。
これを考えることで、計画は単なる希望的観測ではなく、実行に耐える計画になります。

ここまで見てきたように、基本計画とは単なる作業予定ではありません。
山頂までの登り方を選ぶこと。
ゴールのイメージと仮説を最大限に膨らませること。
未来から逆算して道筋を描くこと。
必要リソースを明確にすること。
リスクを予測し、予防策を織り込むこと。
これらを通じて、目標達成までの 「逆算筋書き」 をつくるのが基本計画です。
基本計画が弱いまま実行に入ると、途中で迷いが生まれます。
関係者の足並みも揃いません。
一方で、基本計画がしっかりしていれば、関係者は同じ山頂と登り方を共有できます。
何のためにこの行動をするのか。どこに向かっているのか。どこで注意すべきなのか。
それが見えるようになります。
目標を本気で達成したいなら、まず山頂を見定め、登り方を描くこと。
それが、先考型プロセスマネジメントにおける基本計画の策定なのです。
次回は、基本計画をさらに実行に近づけるための 「実行計画と行動仮標準」 についてお話しします。
目標達成までの大きな筋道を、日々の行動へどのように落とし込むのか。
そして、組織のメンバーが同じ方向に動けるようにするために、どのような「仮標準」をつくるべきなのか。
先考管理を実際の仕事に落とし込むうえで、極めて重要なテーマです。
ぜひご期待ください。