― お客様から逆算し、部門間の“ツナギ”を改善する ―
部門間の壁は、どの組織にも生まれます。大切なのは、壁をなくそうとすることではなく、壁を低くし、仕事の受け渡しを改善し続けることです。今回は「後工程はお客様」という考え方を軸に、お客様から逆算して自分の業務を見直し、部門間・機能間の“ツナギ”を自責で改善する方法を考えます。
これまで、組織風土をつくるための土壌として、「共有土壌」と「共創土壌」についてお話ししてきました。
共有土壌は、組織やチームの根幹となる信頼関係や共通認識をつくる取り組みです。共創土壌は、主に上司と部下の上下関係を効果的にし、互いに成長しながら仕事を進めるための取り組みです。
これに対して、協業土壌は、主に前後や横の関係を効率的にする取り組みです。部門間、機能間、前工程と後工程の間にある壁を低くし、全社レベルで協力し合う風土をつくること、と言えます。
仕事は、一人や一部門だけで完結するものではありません。自分の仕事の先には、必ず次にその仕事を受け取る人がいます。
営業から制作へ、制作から運用へ、現場から管理部門へ、管理部門から事業部門へ。仕事を流れで見ると、次に仕事を受け取る人、つまり後工程は、自分にとってのお客様だと考えることができます。
ここで大切なのは二つです。
一つは、自分の工程で責任を持って仕事の質を保証すること。もう一つは、次工程の人が最も仕事をしやすい形で受け渡すことです。
自分の仕事だけを終わらせるのではなく、次の人が最大のパフォーマンスを発揮できるようにバトンを渡す。これが「後工程はお客様」という考え方の本質です。
「後工程はお客様」を徹底するには、最終的なお客様から逆算して自分の業務を考える必要があります。
自分の部署にとって都合がよいか。自分の作業が楽か。従来のやり方に合っているか。こうした視点だけでは、部門最適に陥ってしまいます。
本来考えるべきことは、「最終的なお客様にとって、何が価値になるのか」「次工程の人が、お客様に価値を届けるために何を必要としているのか」「自分たちの仕事の渡し方が、次工程の生産性や品質を下げていないか」ということです。
つまり、自工程での質の保証と、次工程の満足実現の両方が必要になります。

私は、部門間・機能間の「ツナギ」が、組織全体の生産性を大きく左右すると考えています。
一つひとつの部門が一生懸命働いていても、部門間の受け渡しが悪ければ、全体としての成果は上がりません。
依頼が遅い。情報が不足している。相手の都合を知らない。納期感がずれている。優先順位が共有されていない。修正が何度も発生する。
こうした小さなズレが積み重なると、納期遅れ、品質低下、顧客の不満、部門間不信につながります。だからこそ、協業土壌づくりにおいては、仕事そのものだけでなく、仕事と仕事の“つなぎ目”を改善することが極めて重要なのです。
部門間の問題が起こると、多くの場合、双方に言い分があります。
営業は「制作部門の対応が遅い」と言う。制作は「営業の依頼が遅く、内容が曖昧だ」と言う。管理部門は「事業部門がルールを守らない」と言い、事業部門は「管理部門は現場を分かっていない」と言う。
どちらの言い分にも一理あることが多いものです。しかし、他責のまま止まってしまうと、ツナギは改善されません。
大切なのは、自責の視点です。「自分たちの渡し方に改善余地はないか」「相手が困らないように、事前にできることはないか」「次工程の要望や苦労を、十分に理解しているか」と考えることです。
ツナギ改善は、相手を責める活動ではありません。自分たちの仕事の質を高め、次工程が動きやすくなるように工夫する活動です。

私の経験でも、商品やサービスそのものには満足しているにもかかわらず、次回発注には慎重になるお客様がいました。
よく調べてみると、不満の原因は、デザインや仕上がりではありませんでした。進行中の経過説明が遅い、修正見積の提出が遅い、提出資料が分かりにくい。つまり、お客様は成果物だけでなく、仕事の進め方や途中の対応にも強い関心を持っていたのです。
一方、社内では営業と制作が互いに責任を押しつけ合っていました。営業は制作の作業が遅いと言い、制作は営業の依頼が遅く内容も曖昧だと言う。しかし本当の問題は、どちらか一方の能力不足ではなく、両部門のツナギの悪さを放置していたことにありました。
お客様から逆算すれば、修正見積を早く出すことは極めて重要です。そのためには、お客様のために営業と制作が一緒になって、依頼の仕方や受け方、必要情報、納期、業務の優先順位などを明確にしていくことが必要です。
どこにでもある部門の壁が、実は失注の真因になっていることがあるのです。
部門には、それぞれ役割があります。役割が違えば、見ている景色も、優先順位も、使っている言葉も違います。
ですから、部門間の壁を完全になくすことは現実的ではありません。しかし、壁を低くすることはできます。
そのためには、三つの視点が大切です。
第一に、最終的なお客様から逆算して仕事を考えること。第二に、後工程の満足を意識して仕事を受け渡すこと。第三に、ツナギの問題を自責で改善し続けること。
これらを地道に続けることで、部門間の関係は少しずつ変わります。単なる分業ではなく、互いに価値を高め合う協業へと進化していくのです。
協業土壌づくりの第一歩は、「後工程はお客様」という考え方を組織に根づかせることです。
自工程で仕事の質を保証する。次工程が最も力を発揮できる形で受け渡す。お客様から逆算して、自分たちの仕事の意味を考える。そして、部門間のツナギを自責で改善し続ける。
この積み重ねが、組織の壁を低くし、全社最適の協力風土を育てていきます。
次回は、協業土壌づくりの後編として、管理職全体の視点を上げることについてお話ししたいと思います。